理事長所信

2016年度 公益社団法人岡山青年会議所
第66代理事長 佐野 範一

佐野 範一

はじめに

 長引く不況に苦しめられた日本経済も、アベノミクスによる大規模金融緩和により、株高、円安を背景に明るい兆しが見えつつあります。しかし依然として、少子高齢化による社会活力の低下、都市化・過疎化の進行、格差の再生産・固定化、地球規模の環境・エネルギー問題、民族紛争など様々な危機に直面し、社会の急激な変化に翻弄され続けています。このような変化の激しい時代に生き残るには、変化に柔軟に対応しなければならないと私たちは教えられてきました。しかし、何か問題が表面化した時、大規模な事件事故や災害が起こった時など、何か重大なことが起きた時に、その場その場で個別に対応することで精一杯であるのが現実です。今後ますます多様化・複雑化する社会で負の連鎖を断ち切り、人や自然と共生する成熟した新たな社会システムに転換するためには、理想に向けて自ら変化を生み出し、今までの常識にとらわれない新しい価値を社会に創出することが必要ではないでしょうか。

 岡山青年会議所の設立趣意書には、岡山青年会議所のあるべき姿が書かれています。「吾等郷土の経済活動の第一線にたずさわるもの縣下の各層にわたり同士を集め、もつて岡山青年会議所を其の名にふさわしいものにせんとする。」
 岡山青年会議所は志を持った多様な人材を集め、力を合わせ、卓越したリーダーとして郷土に貢献することを理想としています。郷土おかやま発展のビジョンを実現させるため、私たちが自らの変化を恐れず、志高く行動すれば、湖に投じた一石が大きな波紋を作るように市民を巻き込んでいくことができるはずです。変化を生み出す行動は、これまで感じることのできなかった、手に入れることができなかった価値の創造につながります。始めはたった一人の小さな変化が、次々と同志を増やし、やがてまち全体の大きなうねりへと変わること、それが青年会議所の運動の本質なのです。戦後の廃墟から奇跡の復興を遂げ、経済成長をなしえたのは、先人たちの志が生み出した運動があったからに他なりません。私たちは今こそおかやま発展の使命を帯び、変化がもたらす新たな価値を創出すべきなのです。

ひとづくり室(自らを変え優れたリーダーとなる)

 若者が集う団体が多く存在する中で、岡山青年会議所が誇るべきものは何でしょうか。
一つはこれまで65年間、脈々と守り育ててきた「ひとづくり」の風土です。岡山青年会議所は人に始まり、人に終わる、徹底して人にこだわる組織です。人と人が集い、積極的な変化を経験し、困難を乗り越え、新しい出会いや、わくわくするような時間を仲間と共有しながら、リーダーとして必要な情と理の資質を体得していくのです。
 多くの人は変化を嫌います。新しい何かに挑戦するよりも、ストレスの少ない安心と安全に包まれた環境に居続けることを選んでしまいます。けれども変化の激しい社会において、若者が安定ばかり追い求めるのは、近い将来に大きなリスクになるのではないでしょうか。
 今の若者にこそ「ひとづくり」のJCが必要なのです。岡山青年会議所であれば、人にこだわる濃密な環境の中で、変化を恐れる気持ちを仲間とともに少しずつ克服し、一つ一つ成功体験を積み重ねることを通して、いつしか自ら変化に挑戦するような成長を実感できるはずです。変化は同志がいるから乗り越えることができます。仲間のおかげという成功経験があるからこそ、今度は自分が誰かの役に立ちたいという思いが芽生え、人のため、まちのために懸命に行動できる人間へと変われるのです。私たちはあらゆる機会をチャンスととらえ、本気で向き合い、より良い変化を生み出すために学ばなければなりません。こうして培われた自ら変化に挑戦して行動する力は、必ずや地域のリーダーとして郷土おかやまの発展に貢献するための、大きな武器となるでしょう。

拡大室(共に活動する仲間を増やし、活動を発信することで共鳴を得る)

 会員の減少はこれまでの弛まぬ活動によって、また特別会員の皆様の多大なご協力をいただき何とか歯止めがかかったものの、依然として会員拡大がLOM最大の課題です。次代を担う同世代の若者が、JCでしか経験できない貴重な機会を逃してしまうことは、とても惜しいことです。拡大対象者からはJCに入ったらどんなメリットがあるのか、と良く聞かれます。もちろん単純な費用対効果では、計れないものです。私たちは自らの言葉でJCの魅力を伝えるとともに、メンバー一人ひとりが誰から見ても魅力的で、輝ける存在でなければなりません。その輝きが、多くの仲間との新たな出会いに繋がるのです。
 会員拡大とは、組織を単に維持するために行う活動ではありません。将来まちづくりに貢献する人財を増やす活動であり、公益に資する青年会議所運動そのものと言えます。国や地域、そして輝かしい未来のために志高く行動できるリーダーを生み出すための、最初の一歩を担っているのです。全国には、近年大きく会員増強に成功しているLOMも多く存在しています。「情報」を集め、労を厭わず「行動」し、「熱意」をもって伝えることを意識し、既存の拡大活動のみならず、新たな手法についても積極的に取り組みます。
 広報活動は、私たちの活動を知ってもらう大切な役割であり、発信力が問われます。音が大きいほど、より遠くまで届くように、力強く発信した活動は、多くの人へ理解され、共感と共鳴を得ることにつながります。発信力を向上させるため、自らホームページや広報誌で興味を持ってもらえる内容を掲載することとともに、行政やマスコミとの連携を強化して運動発信を積み重ねていきます。

まちづくり室(自ら変化を起こす岡山人の育成)

 政府が進める地方創生は「まち・ひと・しごと」の創生が掲げられています。その基本方針は、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を生み出し、「まち」に活力を取り戻すことです。但し地方創生は、行政がやってくれること、ではありません。岡山市にとって、地方創生のあるべき姿とはどのような姿なのかを描き、理想に向けて行動するのは、地方の未来を担う私たち一人ひとりです。
 岡山市は、中四国の交通の要衝であり、温暖な気候や恵まれた自然環境があり、災害も少ない、誰もが認める大変住みやすいまちです。地方の人口減少が切実な問題である中、県内はもとより、県外からの移住者も多く、現状では人口を維持しています。岡山市には、多くの人から選ばれる価値や魅力がまだまだ潜在しているのです。
 私たちの活動は、そうした地域に隠れている新たな価値を発掘し、誰もがもっとまちを誇りに思い、愛することができるように、そして未来を担う子どもたちの笑顔があふれるように、元来まちが持つ魅力をさらに磨き上げることです。その過程では多くの市民と関わりを深め、市民とともに活動することが必要となります。郷土を想い、郷土のために行動できる人々が多く集う地域が、活性化しないはずがありません。地域を取り巻く環境が変化する中で、地域の自立した発展に真に必要なのは、やはり「ひと」ではないでしょうか。郷土を愛する心を持ち、未来のために自ら変化を生み出し行動する「岡山人」こそが、地方創生の原動力となるのです。
 また、夏の風物詩として定着したうらじゃは、今年で23回目を迎えます。市民の皆様に愛され、多くの踊り子と観客が参加するこの祭りは、今やなくてはならない存在です。まちにとっても市民にとっても大切な存在であるうらじゃについて、その歴史を振り返って検証し、多くの市民が運営に関わり、より多くの市民が参加する祭りへと進化させなければなりません。誰もが誇りに感じる祭りへと発展させ、また観光資源として多くの人が呼べるよう、今年度もうらじゃを支援します。

交流室(交流を通じて自らを変える)

 青年会議所活動の面白さは、郷土を愛する心や共通の体験をもった仲間が、岡山県内をはじめ全国にいることです。同世代の、JCという同じ学び舎で学ぶ者同士だからこそ分かりあえることが多く、刺激し合い、多くの気づきや共感を得ることができます。JAYCEE同士が集い交わる機会は、そのような醍醐味を経験できる貴重な場となります。そのためメンバー同士の交流は、その場が面白いだけの交流の深め方ではなく、お互いがひざを交えて肝胆相照らし語らうことが大切なのです。
 交流の場を設営する側に求められることは、場を設える空間づくり(ハードウェア)、場を営むおもてなし(ソフトウェア)両方へのこだわりです。貴重な機会を最大限生かすために、相手の立場に立ち、礼儀礼節を重んじ、来ていただける方への深い感謝の気持ちを持った設営をすることです。会の目的を見定め、目的達成のために手間を惜しまず心を配ると、その気持ちは参加された側も必ず感じ取ることができます。岡山青年会議所の伝統の「おもてなし」の心を持って、知恵を絞り、相手の気持ちに立った設営をすることで、互いに実りの多い価値ある時間にしましょう。
 対して参加する側の意識としては、寝食を惜しんで設営して頂いたことへの感謝の気持ちを持つことです。相手がやってくれて当たり前ではなく、設営して頂いた方への気遣い、その思いを感じとれる感性を大切にすべきです。そうして相手に最大限の敬意を払い、常に学び取ろう、自分の糧にしようとする前向きな心構えを持って参加することが、結果として交流が深まるだけでなく、自らを高めることにもつながるのです。

総務室(強い組織のために自らを変える)

 公益法人格を取得している我々は、諸先輩方から受け継いだ組織運営を学び、組織の透明性・公平性を保たなければなりません。近年の公益目的事業の実施については、年会費から振り出す事業費とともに、多くの市民や企業より協賛金をいただくことで成り立っています。協賛金については、組織への信頼があってこそ可能なことです。地域に根付いた公益を目的とする団体として責任のある厳格な組織運営がなければ、信頼を得ることはできません。岡山青年会議所の信頼は、メンバー一人ひとりへの信頼の積み重ねの結果でもあります。私たちはその責任の重さを自覚し、自らを律して行動することが、組織に対する評価へとつながるのです。
 また、限られた予算を、より公益目的の活動に重点的に配分するためには、効率的で多様な事業運営、組織運営を追及する必要もあります。いつの時代も、人だけでなく組織も学び進化し続けなければなりません。岡山青年会議所が明るい豊かな社会の実現に向けてこれからも永続的に活動するためにも、人も組織もより良い変化を追及し、新たな価値を創造していきましょう。

むすびに

自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ
 これは、リクルート社の旧・社訓から引用させていただいた私の大好きな言葉です。青年会議所活動には様々なチャンスがあります。そのチャンスを生かすも殺すも自分次第です。私たちは、家族の時間、会社の時間、自分の時間、全ての人が共通して持つ時間を削って青年会議所活動をしています。目の前にあるチャンスをどのようにとらえるかで、成長のスピード、吸収できるものが違います。我々に残された時間は40歳までしかありません。青年会議所活動ができる今を、全力で駆け抜けましょう。このかけがえのない仲間、過ごした時間を意味のあるものにするのは自分たちです。

 自らを変えるため、おかやまを変えるため、前に進み、青年らしく自ら変化を起こして行こうではありませんか。

 最後に、特別会員、現役会員、そして関係各位の皆様におかれましては、引き続いての絶大なるご支援、ご協力を賜りますと共に、ご指導、ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。