理事長所信

2017年度 公益社団法人岡山青年会議所
第67代理事長 高見 宣哉

高見 宜哉

はじめに

 青年と呼ばれる我々はインターネットの普及と時を同じくして社会人となりました。以降、時間軸は加速度的に圧縮され、濃密になった世界は様々な可能性と価値観の多様化を日ごとに推し進めています。情報や経済の格差がまち、国、世界といったどの単位でも広がる中で今、岡山青年会議所は何をすべきなのでしょうか。株価の回復とともに地方創生から一億総活躍社会を目指しながら、欧州を中心とした不安定な経済情勢、2016年4月に起きた熊本地震のような自然の脅威や漠然とした将来に対する不安の中で今、岡山青年会議所は何ができるのでしょうか。

 岡山青年会議所の誇るべき財産は連綿と受け継がれてきたひとづくりの風土にあります。強固な一体感に基づいた組織やおもてなしの精神に裏打ちされた礼儀礼節はもとより、懸命にやればやるほどに気づきや学びが得られ、ひととの繋がりが広がり、或いは醸成される風土。明るい豊かな社会を築き上げようと集まり散じた66年間の久遠の風土を現代社会でどのように具現化していくのか、気概と可能性と共に進んでいかなければなりません。

 岡山JC設立趣意書は「経済活動は、人類社会の基盤であり青年は人類社会発展の原動力であります。」という言葉からはじまっています。色褪せるどころか、今つくられたかのようなこの言葉のもと、実直に、猛々しく、そして毅然たるJC活動を邁進し、郷土おかやまの発展の原動力として存在感を高めていきましょう。

<ひとづくり室>進取への挑戦

 岡山青年会議所を岡山青年会議所たらしめる所以のひとつにして最大の要因はひとづくりにあります。ただ入会しているだけでは何ら意味を成すものではなく、参加してはじめて蓄積することのできる、そんな活動を通して修練を積むことで自律したリーダーとなり、そのプロセスの中でかけがえのない友情を育む。時代とともに手法は違えども、誇りをもって取り組み続けたこのひとづくりこそが岡山青年会議所の醍醐味であり性質です。懸命にJC活動に取り組むことが困難な社会情勢の中で、仲間に背中を見せ、背中を押し、支え合い、覇気をもって挑戦することで卓越したリーダーへと変貌を遂げる。それは郷土おかやまに対する私たちの使命であると同時に、快く送り出してくれている会社や家族に対する責務でもあります。明確なビジョンをもって、岡山青年会議所という「学び舎」で実践を経験し、成長を目指しましょう。

 一方で、底を打ったかに見える会員数ですが、時勢も相まって必ずしも世間に歓迎されているとは言えません。「その製品を商品にしようとする場合には、その製品を手に入れたいという欲求を、人々の間に喚起しなければ、いかに優れた製品であっても商品にはなり得ない」という言葉があります。JC活動の魅力を伝えるということは、或いは岡山青年会議所の存在感を高めるということは、公益社団法人という人の集まりである以上、私たちひとりひとりがスペシャリティを持ち、輝かねばなりません。そして、その原因がこの岡山青年会議所における活動にあることが重要なのです。

<まちづくり室>拡張性への挑戦

 岡山青年会議所はひとづくりと同様にまちづくりの団体であることを標榜しています。まちづくりのできる人材を育成するのですから、行政との連携をもっと濃密にし、郷土おかやまにとって大切なことは何か」「岡山青年会議所ができることは何か」という目的や志を高め続けなければなりません。少子高齢化社会の中、人口推移が比較的緩やかな岡山ではありますが、教育や医療の仕組み、ライフスタイル、ダイバーシティや都市形成も含めた、産業や企業の構造に至るまで社会の在り方を提案できる鋭敏で先見的な感覚が必要になります。岡山の強みを活かし、更なるまちの魅力向上を図るためには、雇用創出や地域資源を掘り起こし、安心して出産や子育てができる環境づくりを進めていかなければなりません。若い世代が希望を抱く社会の実現に向けて、健全で、共感を呼ぶ事業を創りあげましょう。また、岡山青年会議所以外の選択肢がある時代だからこそ、行政も含めたスケーラビリティ(拡張性)を意識することも重要です。意義や志を貫き通すためには、独力の活動に固執する必要はなく、規模が必要なときや、不得手を補う力があった方が効果的な場合もあります。明確に道筋を見出し、手法にとらわれることなく、誇りに想えるまち「おかやま」を創造する事業を思い切って展開していきましょう。

 また、今年で24回目を迎える「うらじゃ」は、踊り連の練習風景を河川敷や公園で見かけることも珍しくなくなり、すっかりおかやまの夏の風物詩として浸透しています。運動会で「うらじゃ」を踊る児童の父親や母親が踊り子として参加していることもあるのではないでしょうか。先輩方が、「共生と融和」をテーマに、地域の活性化を目指し、創り育ててきた「うらじゃ」。運営や振興に積極的に携わることで、本祭の賑わいは勿論のこと、まちづくり、教育、観光といった多くの切り口をもったおかやまの資源としての更なる発展を見据えて取り組みます。

 今のおかやまに必要なこと。これからのおかやまに必要なこと。行政、企業、他団体、そして市民を巻き込みながらまちのために展開していくことでこれからの岡山青年会議所のまちづくりを確立していきましょう。

<会員交流室>深く清々しい繋がりへの挑戦

 青年会議所の強みである人と人との繋がりを醸成するためには苦労や感動を共有する時間や事象が必要であるとともに、その体験はLOMの内外を問いません。そのような場をいかに心地良く、有意義な空間とするか。貴重な時間を削って参加してくれたメンバーのために、或いはそんな想いで設営してくれたメンバーのために、私たちは礼儀礼節を重んじ、感謝の気持ちを胸に秘めて振る舞うことで肝胆相照らす仲となり、腹心の友を為すこととなります。県外や国外であっても、岡山青年会議所が培ってきた「おもてなし」の精神で、敬意を示し、親交を深めると同時に気づきや学びのある空間、時間を実践することで自分自身の糧となります。

 私たちのJC活動は郷土おかやまに根差すものですが、LOMや地域に留まることなく地方や国、そして世界へと広がりがあります。だからこそ、組織を代表して大きなフィールドで活躍するメンバーは岡山青年会議所の志を胸に刻み、広い視野で、多種多様な価値観や考え方を深く学び、地域を超えた友情を育むことで岡山青年会議所のこれからの可能性を高めることに繋がります。すべてのことに意味があると言われていますが、すべてのことに意味を見出す積極性をもって能動的に取り組んでいきましょう。

 ただ忘れてはいけないのが、この交流の場は青年会議所だけで成立しているわけではありません。携わる人もいれば見ている人もいます。親交を深めるために時間を費やすからこそ、その在り方そのものが周囲からみても高潔であるべき団体として、毅然とした所作振舞いを絶えず意識しなければなりません。

<総務室>規律と一体感のある組織への挑戦

 例会はメンバーが一斉に集い、互いの活動を知ることのできる交流の場です。だからこそ目的や意図、成果をその都度明確にした設営をすることで学びの場として開催することが必要となります。半ば義務的に参加する会ではなく、積極的に足を運ぶ会となることで更に活気と交流の溢れる会となり、好循環を導きます。凛とした、規律ある例会に意義という熱量を加えることで岡山青年会議所らしい時間を創出しましょう。

 また、公益社団法人である岡山青年会議所は郷土おかやまのために効果的な組織で在り続けなければなりません。そのためには、一般企業と同様にガバナンスの効いた、適材適所を念頭に組織化し、運営していく必要があります。しかしながら、「一枚岩」「結束力」と表現されることの多い岡山青年会議所の適材適所とは能力だけではありません。まちのため、ひとのためにできることは何かを追い求める情熱と、持続的に前進する勇気と理合いを兼ね備えた組織を支える高い精度と透明性を基盤として運営していかなければなりません。

 また、そんな岡山青年会議所を世間に広く知ってもらうためにも、広報活動が極めて重要となります。マスメディアとの密接な情報共有は勿論のこと、会報誌やSNSといったツールを用いた積極的な情報発信を通じて周知を徹底し、自身のブランディングを進めることは、これからの岡山青年会議所にとって必要不可欠な積み重ねであり、且つ、先見性を高めるための土台となります。まちのため、ひとのため、そして岡山青年会議所のために活動する私たちの軌跡や情報を、受け手を意識して発信していきましょう。

 結びに

 いつか来る死の間際に「大事な人生をあんなところで無駄に過ごしてしまったな」と思ったとしたら、これほど不幸なことはありません。「私の人生は岡山青年会議所があったから、岡山青年会議所で出逢った友がいたからこんなにも幸せだった」と思いたいというのは言わば当然ではないでしょうか。私たちは皆、大切な青年期をこの岡山青年会議所で過ごす決心をした同志です。まだまだ潤沢とは言えない会員数や存在意義のある事業の展開といった課題や困難が溢れています。面倒だ、休みたい、そんな気持ちになることもあるかもしれません。しかし私たちはそれらを打破しなければならない理由を既に知っています。プライドと気概をもって活動する意義を私たちは自分の目で確かめています。入会に至る動機や職業、育った環境、果ては価値観まで千差万別であるにもかかわらず、この岡山青年会議所で過ごした期間を振り返ったときに出てくる言葉や溢れる想いは皆同じであることを先輩方が証明してくださっています。変革という美名のもとに大切な本質が失われるようなことがあってはいけません。愚痴や言い訳を口にする前に熟慮に熟慮を重ね、過去を紐解き、風土を絶やさず、そして仲間と共に勇猛果敢に一歩を踏み出しましょう。

 人格は繰り返す行動の総計である。
 それゆえに優秀さは単発的な行動にあらず、習慣である。
 連綿と培い育った誇りと自負を胸に確かな一歩を踏み出そう。

 最後に、本年度、公益社団法人日本青年会議所中国地区協議会に会長として出向させていただく佐野範一君、公益社団法人日本青年会議所に議長として出向させていただく李大成君をはじめ、数多くのメンバーを出向させていただくことになりました。地域を問わず役割と責任を果たすために、岡山青年会議所一丸となって万全の態勢をもって支援させていただく所存です。

 特別会員の皆様方、そして関係各位におかれましては、公益社団法人岡山青年会議所に対しまして絶大なるご支援ご協力とともに、ご指導ご鞭撻を賜りますことを衷心よりお願い申し上げます。